« 夢真のTOBは予定通り終了・・・だけど | メイン | これで終わりなんですかね? »

ゲーム理論と衆院解散

さて、私は政治の世界にはトンと疎いのですが、こちらで得られる断片的な情報から見ながら、今回の小泉さんと造反議員の方々の行動について、ゲーム理論的に見てみると面白い状況だなと思ったことがあったので、思いつき程度に。
さて、まずは小泉さんが、参院での決議に対して衆院解散をちらつかせるのが「筋」としていいかとか、「フェア」かと言われれば、全然そんなことはないと思いますが、郵政民営化法案通過ということを目的としてみれば、戦略としては極めて有効だったわけです。
ゲーム理論的にみれば、小泉さんが「参院否決の場合は衆院解散+造反議員は非公認」という「脅し」をかけたことによって、造反衆院議員にしてみれば、「参院否決」「参院ぎりぎり可決」「参院余裕可決」という3つの状況のペイオフの中で「参院ぎりぎり可決」辺りが造反議員のメンツを保持しつつ、党内混乱に対する執行部の責任追及の口実を与えるというところで、当面の落ち着きがいい状況というのが生まれていたように思うのですが・・・
どうも造反議員の方々は、小泉さんの用いた「脅し」に対して、「参院否決という逆風の中で党内の反発を更に買うような解散まではしないだろう」と高をくくってしまったんじゃないかというようにも見えます。というのも、何だか衆院解散が決まってから「新党結成か、いやそうじゃない」とか慌てている様を見ていると「参院否決の場合は衆院解散+造反議員は非公認」というシナリオをメイン・シナリオとして備えていなかったような感じを受けるからです。
でも、これまたゲーム理論的にみると、小泉さんの政治手法の中心というのは、「抵抗勢力」に対する「脅し」による目的の達成なわけですから、「脅しの信憑性」を失うことは自らの政治力の喪失を意味することと同義なんじゃないかという気がするわけで・・・そうすると、「脅しを実現しない場合」には「自らの政治力の喪失」という結果がほぼ確実に生じる一方で、「脅しを実現する場合」、つまり衆院を解散すれば、選挙の結果次第では自らの政治力を高めるという結果もあり得るわけですから、そうしたギャンブルにうって出る方が小泉さんにとって「期待値の高い選択肢」ということになりそうです。
・・・なので、ゲーム理論的に考えると、今回の小泉さんの決断というのは極めて合理的なわけで、更にいうと、こういう具合に「脅しを実現することが合理的な行動」となっている場合には、その脅しには信憑性があることになるので、造反組の議員の方々がゲーム理論的な意味で合理的であれば、ちょっと違う結果になったのかも、などということを思ったりしたわけです。

ところで、背水の陣の戦というのは、一面で見ると非常に戦いやすいわけで、今のところは、小泉さんの思い切りのよさに対して、造反組も民主党も後手後手に回ってしまっているような印象があります。
不謹慎かも知れませんが、いろいろと深い考えがあったとしても、一度けんかになった以上は、まずは「勝つ」ためになりふりを構っててはいけないわけで、造反組の方々も昔の新自由クラブの時のように思いっきりでかい旗を振って新党を結成したりとか、民主党も「郵政民営化選挙」上等で、正面から受けて立つとか、造反自民党議員を取り込むぐらいの気迫が欲しい気がします。
政権交代というのは、そのぐらいエネルギーの必要なことだと思うんですが・・・まあ、在外投票登録をしてこなかった私に、そんな偉そうなことを言う資格もないんですけどね。


Posted by 47th : | 11:35 AM

このエントリーのトラックバックURL:
http://WWW.ny47th.COM/mt/mt-tb.cgi/107

このリストは、次のエントリーを参照しています: ゲーム理論と衆院解散:

» 郵政民営化解散と総選挙 from BLACKFIELDS
今度の衆議院総選挙は、かなり興味深い。マスコミでは、自民党内部の戦いが注目を浴びているようだが、民主党にかかるプレッシャーも結構、面白いと思っている。 ... [続きを読む]

トラックバック時刻: August 12, 2005 07:07 PM

コメント

「民主党も「郵政民営化選挙」上等で、正面から受けて立つとか」とありますが同感です。郵政民営化の当否を問題にしている解散・総選挙であり、有権者もそのつもりなので、民主党としても、その論点に積極的に入っていかないことには、存在意義が小さくなり、票を集めにくいと思います。

もっとも、その論点に入っていくと、民主党内部でも分裂する可能性があるでしょうから、現実的には難しいんでしょうね。そうなると、民主党は、存在意義の小さいまま、選挙当日を迎えてしまうような気がするのです。

(さっそくコメントしてみました。)

Posted by blackfields : August 12, 2005 07:05 PM

>blackfieldsさん
どうも。また宜しくお願いします。
郵政民営化については政治的なコンテキストと経済的なコンテキストの両面があるんでしょうね・・・その辺りを考えると私個人の中でも民営化への賛否は決めかねるところがあるんですが、それでは喧嘩としては負けですよね。

Posted by 47th : August 12, 2005 10:38 PM

ご無事に再渡米なさったようで、なによりです。

今回の選挙で「郵政民営化」だけが争点となって終わってしまうようなら、日本の将来は暗いなあ、というのが正直な感想です。個人的には、今一番大事なのはどうやって破綻財政を再建するかという点であり、次いで大事なのは孤立しかかっている北東アジア内での外交状況をどう立て直すかという点だと考えています。郵政民営化も確かに小さな問題ではないのですが、それが上記2点よりも優先されるべき課題だとは考えがたいのです。小泉首相のとった戦略については47thさんの分析通りだと思うのですが、そのような争点設定をしている時点で政治家としての大局観がない(乃至は、大局観を説明し切れていない点で説明責任を果たしていない)と思うのですが・・・

Posted by くぼ : August 13, 2005 09:04 AM

別に与党を援護するわけではありませんが、優先順位を誤っていることは今回の法案を廃案にする理由にはならないのではないでしょうか?破綻財政の改善に全く寄与しない法案だという切り口であれば、(大局観を完全に誤っているという意味で)議論の俎上に上がると思いますが。

Posted by じょう : August 13, 2005 10:05 AM

ちなみに、民主は、民営化しないまま公社を縮小し、赤字になれば、最終的には税金を突っ込むという考えのようですね。住専処理を彷彿とさせるこんな対案しか出てないというのは、ちょっと我々納税者が不幸な気がします。

Posted by じょう : August 13, 2005 10:16 AM

>くぼさん
ちょっと舌足らずだったかも知れませんが、私も小泉さんの争点設定が正しいとは思っていないのですが、政権をとるとか転覆するとかいう瀬戸際では、時には不利を覚悟でも相手の設定した土俵で戦うことが必要なんじゃないかという気がするんですよね・・・
>じょうさん
細かい点はありますが、公社のままリスクを最少限度にして業務、特に金融保険分野を縮小しつつ、ユニバーサルサービスの維持のための負担については税金投入というのは、それほどおかしな話ではないような気がします。
住専との絡みでは、前に書いたのですが、ノウハウがないままに大量の資金をもってリスク事業に参入していくことの方が住専に近いのかなという気がしています。

Posted by 47th : August 13, 2005 02:15 PM

まったくもってくぼさんのおっしゃるとおりです。ただ、破綻財政建て直しのために、マスコミがあまり食いつかないところでひっそりと(?)議論が進められ、インフラが整いつつあると希望的に観測します。それから、外交政策についても、国会というよりは、政府(官僚レベル。政治家はパフォーマンスしか考えないからあまり期待できない。)でじっくりすすめられていてほしいという希望的観測も持ってます。

Posted by blackfields : August 13, 2005 04:26 PM

出し遅れであることを承知の上で、お返事など。

>じょうさん
おっしゃるように、優先順位を誤っていることが法案廃案の直接の理由とはならないとは思います。しかしその問題と、選挙の争点が「郵政民営化法案、是か非か」に収斂されるべきかという問題とは、また別の問題だと思います。何らかの改革が必要であることは当然の前提ですが、小泉首相の主張するようにこの選挙の争点を「郵政民営化」に矮小化してしまってよいのか、むしろ改革の今度の展望を争点として問うべきではないのか、というのが、僕の問題意識です。どうも首相は、今回の郵政民営化を「改革の本丸」と連呼し続けるだけで、その後の工程表を示していないように思えてならないのです。

>blackfieldsさん
 財政改革のインフラが整いつつあって欲しい、という希望はありますが、僕自身はあまり楽観していません。財務省あたりが頑張っているのでしょうか・・・
 外交についてもいろいろ考えはありますが、一言で言うといまの外交は結果を急ぎすぎのような気がします。

Posted by くぼ : August 14, 2005 10:57 PM

>くぼさん
今回の議論について物足りなさを感じるという点は同感です。ですが、我々には与えられた選択肢から選ぶしかないわけで、ないものねだりをしてもしょうがないかな、というのが僕の本音です。

Posted by じょう : August 15, 2005 12:52 AM

何かちょっと観点がずれているのかも知れないんですが、やっぱり財政破綻って深刻なんですかね?
デフレ期の赤字財政というのが大変なのは分かるのですが、デフレ解消のためには、大規模な財政支出もやっぱり必要な気もするところで・・・
で、インフレに戻ってきたら(戻れるのかというところはあるにせよ)、そのときのGDPの規模とか成長率にもよるんでしょうが、今の財政赤字の規模というのは問題視するレベルのものなのか・・・この辺り、私がマクロに弱いんで分からないところなんですけどね。

Posted by 47th : August 15, 2005 10:42 AM

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
このブログをご覧になる際の注意点や管理人の氏素性はこちらにありますので、初めての方はご一読を。