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会社法トリビア:「黄金株」は・・・

Hardwaveさんのところで知ったこの記事に関連して、会社法トリビアを一つ。

敵対的買収に拒否権、上場企業にも「黄金株」容認案 (asahi.net)

敵対的買収に対する適正な防衛策のあり方を検討している経済産業省の企業価値研究会(座長・神田秀樹東大大学院教授)が、上場企業であっても、買収者による合併・経営統合などの提案に拒否権を持つ「拒否権付き株式(黄金株)」の導入が認められるべきだとした提言案の全容が1日、明らかになった。
(中 略)
「黄金株」は、1株でも合併や経営統合などの重要事項に拒否権を発動できる株式を、あらかじめ友好的な企業など「ホワイト・ナイト(白馬の騎士)」に割り当てておく仕組みだ。市場で普通株式を買い占められても、黄金株を持つ株主が拒否権を発動すれば、敵対的買収者による合併・経営統合ができなくなる。株主総会で3分の2以上の賛成を得て定款を変更すれば、今も発行でき、非上場企業では、中小企業の経営者が特定の親族に経営権を相続させたい場合などに使われているという。

・・・ここでトリビアを一つ。
「黄金株」は・・・・・・上場企業にも存在する。

合併とか株式交換とかに限ってみれば、今でも、種類株式は、拒否権を特別に設定しなくても、(法定)種類株主総会で組織再編には実質的に拒否権を持っています。なので、この前紹介した預金保険機構が持っている無議決権優先株式も、合併とか株式交換に際しては、実質的に拒否権を持っています。
というわけで、銀行とかの組織再編関係のプレス・リリースを見ていただければ、種類株主総会の日程が設定されている(はず)・・・預保はその種類の優先株式の100%株主なので、預保は今でも銀行の組織再編については、拒否権を持っています。そうすると、組織再編とかをブロックできるのが「黄金株」ということになると、これも「黄金株」の一種ということで。(なお、元ネタを見ると、石油公団が持っていた拒否権付株式のようなものを念頭においているようなので、研究会では、多分、組織再編以外にも、資産譲渡や新株発行(さらに取締役の選解任)なんかに拒否権を持たせるような、もうちょっと広範囲のものを「黄金株」と言っていたんだと思いますが)
この「無議決権優先株式なのに、合併とか株式交換で拒否権が発生しちゃう」というのは、実務的には、結構悩みどころで、むかーし出した「新しい株式制度」という本の中で、定款で拒否権を外せるようにした方がいいんじゃないでしょうか、ということを書いたんですが、これが効いたかどうかはともかくとして、会社法現代化では、この辺りが無事手当されております(322条2項)。
さて、逆にいうと、実は、この法定株主総会の存在のおかげで、普通の無議決権優先株式が、買収防衛策に転じたりということも可能だったりします。まあ、公開会社で優先株式を出しているところは、銀行を除くと、事業再生絡みだったりするので、決して数は多くないんですが、こういう会社を買収しようと思うと、優先株式対策というのを別途考えないといけないんですよね。
・・・以上、ちょっとした会社法トリビアでした。


Posted by 47th : | 11:16 AM

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トラックバック時刻: November 18, 2005 11:53 PM

コメント

ごぶさたです、お元気そうですね(私は風邪気味です・・鼻水)。
この報道の件、同じgooニュースで読める○同通信さんの記事のほうや、今朝(11月3日)の日○の記事
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20051103AT1F0201A02112005.html
のほうが、ニュアンス的にはより正確かなと思いますた。どの報道機関においても記事を書いてらっしゃる方は、私と違って省庁内部の元ネタを入手されているんでしょうから、あくまで憶測にすぎませんが(でも、昨日朝、コンビニで缶コーヒーを買うときに、○売新聞の一面トップの見出しを見たときは、我が目を疑いましたですよ)。

きょうは「文化の日」ですが、Cロースクールの授業は休講になりません(涙)。

Posted by けんけん : November 2, 2005 07:01 PM

試験おつかれさまでした。皆が試験勉強で遊んでくれなかったので、裁判傍聴に明け暮れておりました(笑)。さて、黄金株の中でもmultiple voting rightについては、単元株の1単元の株式数を変えることによって実現できるなんていう議論が昔あったのをふと思い出しました。その議論は、その後、実務的(特に上場規制など)に進化したのでしょうかね?ご存知でしたら、それもトレビアとして教えてください。

Posted by ぶらっくふぃーるず : November 4, 2005 10:52 PM

>けんけん先生
実は私も先週は風邪をひいておりましたが、今週は穏やかな気候で大分回復しています。
それにしても、報道によるニュアンスの差は驚きですね。まあ「黄金株」という概念自体、定義が曖昧なんで、取り方によっては、どうとでもとれてしまうところがありそうですね。
>ぶらっくふぃーるずさん
もちろん、議論は残っていると思いますし、会社法現代化でもふさがれてはいないので、できないことはないんでしょうが・・・上場企業で正面から使ってるところは、まだないんじゃないでしょうか?(優先株と普通株の単元が違っていて、結果としてそうなっているものはありそうですが・・・)

Posted by 47th : November 5, 2005 02:01 PM

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