ついさっき、件の事件については何も書かないと言った舌の根も渇かないうちに何ですが、株価を見ていたら純粋にイベント・スタディとして面白かったので・・・
ちなみに赤い線がオリジン東秀、青いのがドンキ、緑の線はTOPIXです。
どこが面白いかというと・・・
- TOBの開始と共にオリジン東秀の株価はジャンプし、ドンキの株価は大幅に下がっている。
アメリカの実証研究でも、買収のアナウンスで株価のリターンが若干下がると言われているのですが、ドンキの場合には20%弱のネガティブ・リターンが見られるのがびっくりなところ。
「M&Aで株価を上げる」なんていう話をどこかで聞いたことがあるかも知れませんが、実証研究的には、M&Aで株価が上がるというのは、必ずしも普遍の真実ではないわけです(もっとも、どこぞの会社はEPSが異様に大きかったので、ブートストラップ・ゲームがはまった可能性はありますが)
日本の市場の効率性をどこまで信用するかにもよるのですが、オリジン東秀の発行済株式数が約1800万株で400円のジャンプなので(その後200円ほどおちていますが)、約72億円(その後の下落を考えると36億円)のゲインで、ドンキの方が約2200万株で800円の下落ですから、176億円のロスというところで、差し引きで考えると100億円から130億円のロスが出ているということで、一見すると市場はこの買収は全体的な効率性を向上するものではないと判断しているようにも見えます。ただ、16日はトピックスの方も大きく下がっているので(5%ぐらい?)、ゲインを上方修正、ロスを下方修正しなくてはいけないので、もうちょっと差は縮まるかもしれませんね。
あと、この時点での市場の反応を見る限りは、ドンキがオリジンの少数株主の犠牲の下に利益を吸い上げるというシナリオとは、ちょっと整合性を欠いているようにも見受けられます(もしそうだとすればドンキの株価は上昇するはずなので)。 - ドンキのTOB開始直後にオリジン東秀の株価が跳ね上がった後、大きく下がっている
もう一見して明からですが、TOB開始直後にオリジン東秀の株価が思いっきりジャンプした後、翌日ぐらいには半分ぐらい戻っています。
これが、「敵対的」であるということが分かって買収が完了する確率が低いと判断した結果なのか、それとも、単に市場がオーバーリアクションを見せただけなのかは、これだけでは分かりませんが・・・後者だとすれば、この辺りが日本の市場の効率性の一つの限界を示していることになりますね。 - イオンの参入でドンキの株価もあがっている
オリジン東秀の方は少し上がった後に、すぐに元の水準に戻っていて、こっちも面白いんですが(マーケットのオーバーリアクション?)、ドンキの株価が上がっているのが面白いところです。
まあ、合理的に解釈すれば、市場は「ホワイトナイト参入」→「ドンキTOB失敗」→「ドンキ、オリジン株売却で利益」というシナリオを予想したという辺りでしょうか?
ドンキのオリジン株平均取得価額は見ていないんですが、予想されるキャピタル・ゲイン額とここでの時価総額の上昇額を比べてみるのも面白そうです。 - TOB不成立でオリジンの株価は下がり、その後落ち着いている
前段の部分を合理的に解釈すると、市場はドンキがTOB価格をつり上げてくると見たのかも知れません。
後段の部分は、この僅かの間にドンキはオリジン株を15%も買っているのに、オリジンの相場に全く影響を与えていません。これはこれで、結構、興味深い現象かと。 - ドンキ49%取得発表で両者の株価が下落
で、この最後のオチも面白いところで、色々な解釈があり得るんですが、個人的にツボなのは、1/16の市場の反応と矛盾しているように見えるところです。
1/16の時点でも上限株式数の設定があったわけで、ドンキが過半数を取得して少数株主はオリジンに残るというシナリオ自体は1/16の時点でドンキがTOBをかけて成功した場合と状況は変わりません。
にもかかわらず、市場は全く異なる反応を見せているわけです。
この1か月の間で、ドンキによるオリジン買収成功の場合の効率性評価に大きな影響を与える事実があったとみるのか、それとも、1/16か2/16の何れかの反応が不合理だったのか?
個人的には、極めて興味深い現象です。
で、ついでにイオンの株価を見てみると・・・
こちらの方は何が面白いかというと、TOBに参入した時点では、それほど大きなアブノーマル・ロスは見られないのに、ドンキのTOBが不成立になると大幅なアブノーマル・ロスが出ているという辺りでしょうか?
普通に考えれば、もしオリジンを買うこと自体がイオンの利益にならないと考えているのであれば、参入した時点で株価にロスが見られなくてはいけないし、逆に、ライバルがドロップして価格の競り上げを回避できたのであれば(しかもオリジンの株価を見ていると、市場はビッドでのTOB価格の上昇を期待していたようにも見えますし・・・)、ドンキのTOB不成立はポジティブに評価されるはずですが・・・
いやはや、いろいろ考えてみると面白いところです。