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村上氏に買付関係者インサイダーの疑い?

(早速+6/2追記あり) 

インサイダー取引:村上氏を捜査 東京地検特捜部(毎日新聞)

「村上ファンド」を率いる村上世彰代表(46)に証券取引法違反の疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査を進めていることが分かった。05年のライブド アによるニッポン放送株買い占めが公開買い付け(TOB)に準じる行為に当たり、村上代表は買い付け情報を事前に知りながら同社株を売買したとされ、 TOBに関して禁じられたインサイダー取引の疑いがあるという。特捜部は証券取引等監視委員会とも連携し、既に関係者から聴取した模様だ。・・・
関係者によると、この時にライブドアが時間外取引で5%以上のニッポン放送株を買い集めた行為は、証取法上の「TOBに準じる行為」に当たるという。村上 代表は、ライブドアによる株取得情報を公表前に得てニッポン放送株を売買したとされ、特捜部はこうした行為が証取法の「公開買い付け者等関係者等が禁止さ れる行為」としてのインサイダー取引に当たる可能性があるとみている模様だ。

・・・というわけで、この「関係者」というのが誰かよく分かりませんが、この記事が正しいとすると、問題となっているのはライブドアによるニッポン放送株買付に際しての話のようです。
これがどう発展していくのかは、今の時点では予断を控えますが、とりあえず当時旧ブログの方で、今回問題となっているインサイダー取引と通常のインサイダー取引の違いをまとめているので、そちらをご紹介です。

この記事で書いているように、今回問題となっているのは、通常のインサイダー取引ではなく、買付関係者インサイダー取引です。この買付関係者インサイダーの一つの特徴が、問題となる取引は「売買」のうちの、「買い」だけで「売り」は問題とならない点。

というわけで、当時、村上氏はニッポン放送株の処分はやっていましたが、「買増し」はどうだったんだろう?ということで、この買付の前後のニッポン放送株に関するMACアセットマネッジメント(以下「MAC」と略します)の大量保有報告書を確認してみると・・・

  • 1/13 変更報告書(27条の25第1項)
    この報告書では、最後の売買は1月5日803,050株の取得で、この時点で18.57%保有ということになっています。
    こちらは、普通の大量保有報告書なので直近60日間の売買が報告されています。
  • 3/15 変更報告書(27条の26第2項)
    この報告書では、保有株式割合が18.57%から3.44%に落ちたので、証取法27条の26に定める「特例対象株券等」に落ちたということで、直近60日間の売買は報告されていません。 (この辺りについては、isolgue「敵艦スクリュー音、未だ無し!(ニッポン放送株:解決編)」をご覧下さい)

さて、そうすると、MACが証取法の規定を遵守していると仮定した場合、少なくとも、MACの持株割合が10%に下がる前に1%以上買いますことはできない(というか、していない)・・・と、もう少し歯切れよくいうと、(当事者たちはあくまで市場で誰が買ったか分からないと仰っていますが)ライブドアのToSTNET取引の相手方がMACであり、この2/8の時点でMACが8.57%以上の株式をライブドアに売ったのだとすれば、MACは2/8より前に1%以上のニッポン放送株式を買っていないということになります。

とすると、最初に戻って、買付関係者インサイダーが成立するためには、①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していて、かつ、②ライブドアの関係者が村上氏にその事実を伝達し、③その事実を知りながらニッポン放送株式を買いましたということが立証されなくてはいけません。
仮に村上氏が1/5の後、2/8までの間に買増しを行っていないとすれば1/5以前の取得の際に、少なくとも①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していなくてはならないわけです
まあ、この間に1%未満の買付行為があって、そこを問題視しているという可能性もあるんですが・・・もしそうだとすると、ライブドアは村上氏を信頼して相談を持ちかけたのに、村上氏は、それを使って一儲けした・・・でも、1%以上は買わなかったという話になるわけですが・・・なんか、「せこい」んですよね。出し抜くなら、5%ぐらい噛まして、鮮やかに出し抜けばいいし、1%に満たないステークスのために、相手との信頼関係を損ないかねないようなことをするというのも何かしっくりこないものがあります。

何れにせよ、今回のシチュエーションでは、仮に上記①~③が立証されたとしても、④村上氏による買増し行為が、ライブドアの意を受けて後にライブドアに株式を売却することを合意した上での行為であったとすれば、村上氏とライブドアは「共同買付者」であって、買付関係者インサイダーには引っかからないという解釈の余地も残っているところです(ただ、ここは文言解釈上微妙というのは、旧エントリーをご覧下さい)。
もっとも、当時は、当事者は、確か、お互い市場で売却したのであって誰に売ったかは分からなかったと言っていたはずなので、こういう話になると、当時のライブドアによる株式取得の経緯の際の適法性が怪しくなってくるわけですが・・・

何れにせよ、これまた法的には色々と論点があるということで、今後の推移は冷静に見ていきましょうということで。取り急ぎ。

(追記)

買付関係者インサイダー(167条)という趣旨の報道は、今のところ毎日だけのようですし、磯崎さんも 

「166条じゃなくて167条じゃないか」てなことをおっしゃる方もいらっしゃるようですが、どうなんでしょうか。

と仰っているので、上の話は、あくまで毎日新聞の記事が正しかったらという前提ですので、そこのところはご注意を。

(6/2追記)

その後の新聞報道を見ていると、1月5日以前に、①ライブドアによる買付情報を知っていた、という方向性と、②フジテレビのTOB開始の情報を知っていたという観測が見られるようです。

①ということになると、2月8日の1か月以上前の時点でライブドアが株式取得の「決定」がなされていたことになりますが、その間にフジテレビTOBという大きな状況変化が起きているわけで、これがなかったら取引ボリュームにかかわらず株価がTOB価格に張り付くという特殊な状況は起きなかったわけですから、その意味でも買付「決定」が12月にあったと言えるかは少し微妙。

②ということになると、TOB自体の準備は当然1か月前からやっているでしょうから、「事実」としては存在している可能性は高いわけですが・・・TOB情報を知って株を買い集めることは、市場買付と比べると摘発されるリスクは遙かに高いことを考えると、逆に、村上氏ほどの百戦錬磨の強者が何の法的なロジックもなく、そんな危ないことをやるのか、というところが腑に落ちないところです。


Posted by 47th : | 19:18 | Securities

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ついに、このような事態に。 村上代表を立件へ インサイダー容疑、東京地検近く聴取(asahi-com。朝日新聞) http://www.asahi... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年06月03日 06:06

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(買付関係者)インサイダー取引の疑いが持たれているMACファンドの村上氏ですが…ライブドアが強引なM&Aや†分割をしている時代から、ネット上の一部サイトで... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年06月03日 11:22

コメント

なんか、阪神の株主総会との関係で、タイミングよすぎですよね~

Posted by 黒原びびびっびー : 2006年06月02日 00:50

おっ、黒原びびびっびーさん(って、訳分からないHNはやめといて)、お久しぶり。
南の島でのリハビリは終わったんですか(笑)
いや、阪急にとっては、タイミングがいいのか、悪いのか、これまた微妙じゃないか、と。

Posted by 47th : 2006年06月02日 01:09

変なHNですいません。リハビリは終わりましたが、すでに、疲労回復ジュースを飲んでいます(笑)。

Posted by ぶらっくふぃーるず : 2006年06月03日 00:56

1月5日の80万株までが、堀江君のニッポン放送株取得・GOサインの必要・十分条件だったのでは?当然、上場廃止規定(75%)の事まで想定の上で。
高検までこの件に付き<村上氏・無罪>を認知した行動に注目。

Posted by ひろちゃんまん7 : 2006年06月04日 19:25

 
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