Insider Trading の全エントリー

村上氏 v 検察の第2ラウンド?

村上被告側、起訴事実の根幹否認 公判前整理手続き開始(asahi.com)

証券取引法違反の罪に問われた村上ファンド前代表の村上世彰(よしあき)被告(47)に対する第1回「公判前整理手続き」が16日、東京地裁で開かれた。 弁護側は、「インサイダー情報を認識した時期は04年11月だった」とする起訴事実の根幹を否認し、検察側と全面的に争う姿勢を明確にした。
・・・
検察側は、前代表が、ライブドア側からニッポン放送株を大量取得する方針を「04年11月8日」に聞き、直後の同月9日から05年1月26日までに計約99億5000万円で約193万株を買い増したとしている。
これに対して、前代表側は、検察側から開示された供述調書など証拠を分析した結果として、五つの争点を提示。(1)ライブドアは「04年9月15日」に 大量取得の方針を決定していない(2)「11月8日」段階では取得方針が前代表に伝達されていない(3)インサイダー取引の故意はない(4)重要事実を 知って買い集めたわけではない(5)買い集めのすべてが前代表の指示ではないとし、「買い増しはインサイダー取引にあたらない」と主張した。
・・・
弁護団によると、「検察側の主張する取得方針の決定時期はあいまい。この前提でインサイダー取引を認めれば実務にも影響する」と弁護団が説得し、前代表も「裁判所の判断を仰ぐべきだ」との考えに傾いたという。

ということで、やはりというか、村上氏が検察側の主張に大人しく従うということではなく、公判で検察側主張の弱点を徹底的に衝くということになるようです。
こうなると、最近特捜に異動されたあの方との対決も(あるのか知りませんが)楽しみになってくるところですが、ご参考までにということで村上氏逮捕関係の過去エントリーを今一度ご紹介しておきます。

ところで、私の勝手な戦前の予想からすると、新聞報道の限りでいうと、①情報を聞いた時期が1月28日まで引っ張られていることと、②共同買付者の点については争っていないというところに注意が惹かれます。

まずは事実関係で勝負できるシンプルな構成でいくという方針ということではないかと勝手に推測しますが、この辺りは弁護団の今後の戦略的にも注目したいところです。

先行する?堀江氏の公判も、弁護団と検察の間でのガチンコ勝負が繰り広げられているようですし、この訴訟も日本の今後の実務に色々な意味で影響を与えるものになるんでしょうね。

と、ごく簡単ですが、こんなところで。


Posted by 47th : | 20:48 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Insider Trading

インサイダー取引の被害者?

先日紹介したNYTが大々的に採りあげたアメリカの上場会社M&Aでのインサイダー疑惑ですが、その記事で記者は次のような締めくくりをしています。

When stocks gyrate because nonpublic information about deals has leaked out, many people are harmed.The most affected are those who sell shares in the company before it is taken over at a significant premium. An investor who sold Georgia-Pacific shares on Nov. 9, just before the unusual trading, missed a 46 percent gain. Those who sold the Andrx Corporation, just before unusual trading began last February missed, a 36 percent gain

(この文章の中ですら支離滅裂なところがあるのですが)どうも公表前に売却した株主はプレミアムをもらえないじゃないかと主張しているようなのですが・・・そもそも、インサイダー取引があってもなくても、公表前に株式を売却してしまえばプレミアムは受け取れないわけです
むしろ、公表前であっても、NYTが主張するように違法なインサイダー取引のせいで(この主張自体、疑うべき点があることは前の記事で述べましたが)株価が上昇するとすれば、公表前でも株価には一定程度のプレミアムが織り込まれるわけで、その意味では、公表前に株式を売却してしまった株主は、むしろ公表前の株価上昇のおかげで本来は得ることができなかったプレミアムを受け取ることができるわけですから、むしろ公表直前に売却した一般投資家は、情報の滲み出しのおかげで救われている側面があります。
NYTの記者も記事を書きながら、その矛盾に何となく気づいたのか、最初の文章では「買収によるプレミアムが受け取れない」といいながら、次の文章では「異常な株式取引の直前に株式を売却をした場合には」と微妙に表現を変えているのですが、「異常な株式取引の直前に株式を売却した人」は、インサイダー取引のない状態で株式を売却しているわけですから、インサイダー取引の被害者のように扱うのは、そもそも文章として意味をなしていないように思えます。

ここで言っているのは、せいぜいが「M&Aの公表のタイミングが遅れることによる投資家の損害」であって、直接にインサイダー取引から生じる問題ではありません。
何とかインサイダー取引とこじつけるとすれば、インサイダー取引によって利益をあげるために会社が公表を遅らせた場合ですが、アメリカの場合は、M&Aに関する開示のタイミングを不必要に遅らせれば、それだけで証券訴訟のリスクに曝されてしまうわけで、制度的にそうした意図的な公表タイミングの引き延ばしに対する相当の抑止力があるわけで、この抑止力ではインサイダー取引による利益取得の誘惑に対して不十分なものかどうかは、それ自体議論と実証の対象となるべきものであって、因果関係は自明ではありません。

そもそも、極論を言ってしまえば、株価が実際の企業価値の変動を的確に反映させることこそが一般投資家保護になるわけで、原因がインサイダー取引であれ、市場での噂であれ、公表すべき段階には至っていないが、買収が実行される可能性の高まりにつれて株価にそれが織り込まれるのであれば、それは投資家保護につながるとすら言えるわけです(※)。

だからこそ、インサイダー取引規制の制度設計には悩ましい部分が多く、アメリカでは法学と経済学の両面から論争が繰り広げられているわけですが、このNYTの記事は、そうした部分の消化が不十分だったようです。

・・・と、こんなことを思ったのは、私だけではないらしく、Business Law Prof Blogというブログを書いているOhio State UniversityのDale Oesterle教授も次のような感想を述べているので、ご参考までに。

The story does, however, struggle to define why insider trading is illegal, and Ms. Morgenson's list of "victims" is problematic. Her argument that stock sellers are injured, because they could have held their stock until after the announcement and recieved more value, makes no sense unless one assumes that only the higher price, created by insider trading, induced the sale, that the sellers would not have sold at the lower pre-announcement market price had there been not insider trading before the announcement.  This is a stretch for many sellers, who had decided to sell pre-announcement and get the market price, whatever it was.  Those that sold only on the rise, refusing to wait, accepted the risk that they would give up any more increases in the price.  Victims?  The real reason for the illegality of insider trading (the disadvantaged buyer who wanted to buy and could not at market prices pre-announcement) remains elusive to even educated reporters.

 

(※)もちろん、世の中はそれほど単純ではなく、インサイダー取引は情報伝達効果がある一方で、現在の株価水準が誤っているというシグナルも発してしまうので、一概にインサイダー取引を情報効率性の観点から肯定できるわけでもないのですが、インサイダー取引=悪という決めつけも同じぐらいに短絡的です。


Posted by 47th : | 12:22 | トラックバック (0) | 関連エントリー (2) | Securities : Insider Trading

アメリカのM&Aの4割でインサイダー?

今朝のNew York Timesのトップ記事は、"Whispers of Mergers Set Off Suspicious Trading" ということで、NYTがカナダの調査会社に依頼した独自調査の結果、M&A公表の直前に対象会社の株価が上昇することが確認されたということで、40%以上のM&Aで違法なインサイダー取引がなされているとして、ネット版で4頁に亘る長目の記事を掲載しています。

日本語でも時事通信が、次のように伝えているようです(Yahoo!ニュース)。

27日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、過去1年間の大型企業買収を調べたところ、インサイダー取引の疑いがある不審な株価の動きがその4割で見られた と報じた。一般投資家が買収情報を知らないうちに関係者だけが「ぬれ手で粟(あわ)」の巨額の利益をむさぼる違法行為が横行していることになり、同紙は制 度的な問題になりつつあると警告した。

ただ、元のスタディでのサンプルの選定法やアブノーマル・リターンの算出法を見ないと何とも言えないんですが、対象会社の株価の動きだけで「違法なインサイダー取引」があったと主張するのは、ちょっと強引と言う印象も拭えないところです。

いくつかの要因がありますが、M&Aの場合には、公表前の買収者(あるいは、その意図を受けた者)による対象会社株式の買付けは、ほとんど不可避です。
"Toe Hold"と呼ばれたりしますが、買収に先立って、対象会社の株式の一定割合(多くの場合、日本で言う大量保有報告書の提出義務にしっかからない5%未満)を取得することは、①実際に買付を行うことになった場合には、先に取得した分についてはプレミアムを支払わないでよく、②ホワイト・ナイトや競合する買収者が買収に成功した場合には、先に取得した分についてはプレミアムをもらうことができるので交渉費用の一部を回収できる、といった理由から、M&Aの教科書ではむしろ推奨されています(※)。
こうした買収者自身によるToe Holdの取得は、もちろん違法なインサイダー取引に当たりません。

また、(対象会社からではなく)買収者から情報を得て株式を取得する行為も、ストレートにはインサイダー取引規制には該当しないはずです(※2)。

あと、M&Aというのは、具体化すればするほど、資金調達やデュー・ディリジェンスなどで関係者は増えていきますし、直接に情報を受領していなくても、そうした活動を見て、市場はさまざまな憶測をします。NYTの記事では、サンプルから、そうした事例を除いていると言われていますが、市場に憶測が流れているかどうかを画定すること自体、それほど簡単な話ではありません(※3)。
(あと、時事通信でも4割がインサイダーと書かれていますが、そもそもサンプル数を90個に限定して、そのうち37個ということなので、4割というのは、そのうちのものでしかありません。アメリカの上場会社の買収案件は年間400-600件ぐらいあるので、例えば母数を500件とすれば、37件は7%強でしかないので、その意味でもミスリーディングですね)

というわけで、公表直前に株価の上昇があるとしても、それだけでは、その株価の上昇が違法なインサイダー取引によるものかどうかは、何とも言えないと言わざるを得ません。

それが対象会社からリークされた情報に基づくということであれば、M&Aの場合だけでなく、他の重要な情報開示にあたっても異常なリターンが観察されるかどうかということを見る必要があるでしょうし、買収会社側の方の株価の動き(※4)とも比較することで見えることもありそうです。

また、こうした「滲み出し」の現象自体は、決して新しい話ではなく、昔からよく知られています。
ただ、この「滲み出し」が「違法なインサイダー取引」に直結するかどうかは微妙な話ですし、SECや取引所にとっても、それほど目新しい話ではないはずです。

その意味で、記事に書かれていた次のSECの反応の冷たさは、何となく理解できるところがあります。

The S.E.C. would not comment on the study but said that it had looked at Measuredmarkets’ system and concluded that surveillance techniques of self-regulatory organizations like the New York Stock Exchange were more sophisticated.

 ・・・というわけで、NYTは鬼の首をとったような感じなんですが、個人的には、ちょっとチグハグな感じも受けたところです。

私だけが感じるのかも知れませんが、この記事には、「何だか分からないが機関投資家が怪しげなことをやって個人投資家を食い物にしている」という印象操作的なものを感じてしまいます。
例えば、この記事は、最後の部分で「インサイダー取引が被害者なき犯罪である」という学者の主張に対して、「いや、公表前に株を売ったたくさんの人と、買収会社は被害者だ!」と結んでいるわけですが・・・そのロジックがNYTにしては、ちょっとプリミティブ過ぎるような。
どの辺りがプリミティブかという話は、また次の機会に。

 

(※)もっとも、Toe Holdが、実際に、どの程度用いられているかについては議論はあります。 

(※2)もっとも、対象会社と買収会社との間で守秘義務契約が締結されていて、買収会社自身も自らが買収を計画していることを公表することに制約がかけられている場合には、信認義務違反が認められる可能性はあるかも知れませんね。

(※3)情報の種類にもよりますが、アナリストがレポートに書いていない情報であっても(あるいはアナリストがレポートに記載するよりも早いタイミングで)、機関投資家の間で市場動向に関する情報はやりとりされているでしょうし、その情報のやりとりを外部からトレースするのは通常は難しいんではないでしょうか。

(※4)一般にM&Aが公表されると、買収会社側の株価は下落することが知られているので、買収会社と対象会社の株価の動きを比較することで、投資判断の基礎となっている情報の精度を推測することもある程度できるかも知れません。


Posted by 47th : | 19:24 | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Securities : Insider Trading

審判の資質

勝つには勝ったけど、何かすっきりしない>イタリア-オーストラリア

前回も疑惑の判定は色々とあったんですが、それにも増して今大会は審判のせいで面白さが削がれてしまう試合が目につきます。
誤審そのものは、これだけスピードのある現代サッカーで、しかも出ている選手はファールをする方もされる方も(?)その道の達人ばかりなので、後でビデオで見て「やられたぁ」というのはあると思いますし、それも含めて試合の流れとか運のうちだとは思うんですが、見ている方のストレスが溜まるのが、今大会のカードの出し方。

もちろん、悪質なファールには厳しい態度で臨まないといけませんが、退場を含めたカードによる処分という権限が審判に与えられているのは、あくまで試合をコントロールする、あるいは、サッカーの本来の面白さを損なわないようにする、ためのはずですよね。

それが、審判がちゃんと見えていないところで、何かあって派手な転倒があればイエロー・レッドじゃ、みんなごろごろ転がり出すし、カードをもらった方も納得できないので審判への不信感は募るし、そのたびごとにプレイは中断するので選手のストレスも溜まるし、で、ストレスからプレーが荒くなって、またイエロー・レッド・・・で、4年に一度しかない貴重な試合が凡戦になってしまう、と。

世界の超一流どころのプレイヤーが集結する試合をコントロールするためには、どうやって選手からの信頼を得るかが重要なはずですが。。。その手段をイエロー・レッドに頼ってしまっているところがあるような気がします。
もちろん、ほとんどの場合、審判と選手は初顔合わせでお互いに信頼もへったくれもないでしょうし、世界のトップクラスの自信家どもを相手にしなきゃいけないという面で一筋縄でいかないことも事実ですが、世界のトップクラスで活躍し国の威信を背負ってピッチに立っている22人を、イエロー・レッドという「鞭」だけで威嚇して言うことをきかせようとするのも、土台無理な話です。

一瞬は大人しくなるかも知れませんが、審判が技術や自身のなさを「鞭」で補おうとしているだけだと見抜かれた瞬間に、審判に対するリスペクトはふっとび、コントロールどころの騒ぎではなく、サッカーの醍醐味はどこかに行ってしまいます。

理想論かも知れませんが、選手から審判に対する本当のリスペクトというのは、審判から選手に対する、あるいは、選手にとってその一試合が持っている「重み」に対するリスペクトがあって成り立つんではないでしょうか。
WCに出てくる選手で(ごく一部の例外を除いて(笑))、好きこのんでイエロー・レッドをもらいたがったり、相手の選手生命を壊したがっていたり、試合を凡戦にしたいと思っている連中はいないし、当たる方も当たられる方も、それぞれに高い技術を持っているわけです。
気をつけなくてはいけないのは、試合が進むにつれ、疲れ・ストレスから試合が荒れていくことであって、そうした場合にはプレイを止めたり、「頭を冷やさせるため」にカードが必要でしょうが、審判がカードを濫発して選手のストレス・メーターをあげるのは逆効果です。

・・・と、これはサッカーの話ですが、審判の資質という意味では、証券市場における審判に対するプレイヤーの信頼についても同じようなことを感じるところがあります。


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Posted by 47th : | 15:25 | コメント (12) | トラックバック (1) | 関連エントリー (15) | Securities : Insider Trading

共同買付者と167条

ワールド・カップネタにうつつを抜かしている間に、村上氏は起訴に至ったようです。朝日新聞の記事を見ていても、検察のストーリーというのは、村上氏がLDを引き込んで「一緒にニッポン放送株式を買おうじゃないか」、と、けしかけたという話のようです。

このストーリーに関する?なところは、磯崎さんが素晴らしい整理をされていますんで、そちらをご覧頂くこととして、前から気になっている「共同買付者に対する167条の適用」について、余りブログ向けのネタでもないだろうと思って積み残しにしていた非常にテクニカルな点について見ておきましょう。

というわけで、以下の議論は、いつものようなローエコとかではなく、極めて実務家的なテクニカルな条文解釈の話ですので、興味のない方は、また明日ということで、法律家のやるテクニカルな条文解釈というのは、どんなものなのか怖いもの見たさと思う方は、続きをどうぞ。


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Posted by 47th : | 23:31 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (6) | Securities : Insider Trading

インサイダーとネット社会?

昨日の記事について、弾さんから「サイバースペースにおけるインサイダー定義の憂鬱」というTBをいただいたですが、その中で面白い話が。

問題は、何をもって「あなたしか聞いてない」のか、「一般株主も聞いているのか」が判定されるか、にあります。
例えば、上の製薬会社の社員が、このことをblogに書いた場合はどうなのか、SNSに書いた場合はどうなのか、ということです。
例えばblogの場合。これはblogという不特定多数、すなわち一般株主も見れる場所に書いてあるのだから、書かれた時点でインサイダー情報にな るのかならないのか。そしてSNSだったら、基本的にはインサイダー情報だけれども、それが書かれたのが日記ではなく株主コミュニティだった場合どうなる のか?

まず、問題を整理すると、ひとたびインサイダー情報になった情報は、(インサイダーではなく)上場会社自身が一定の定められた方法で公表措置をとらない限りは、たとえテレビのニュースで広められてもインサイダー性は解除されません。この一定の方法というのは、大きく分けると、①臨時報告書など証券取引法所定の開示書類の登録、②新聞など報道機関に対する公表、③取引所を通じた開示(東証の場合はTDNet)に分かれます(※)。
逆にいうと、自社のホームページにプレス・リリースを掲載しても、そのプレス・リリースが報道機関や取引所に渡されなければ「公表」にはなりませんし、マスコミにスクープされ全国版のニュースで報道されても会社自身が正式な開示をマスコミに行っていない限りは、たとえ日本中の半分が知ることになっても、依然として「未公表」事実です。

というわけで、「公表事実かどうか」=「インサイダー情報かどうか」というレベルでは、その情報がどの範囲に開示されたかは問題とはならないわけです。
上のルートで開示されていない重要事実は、全てインサイダー情報です。

では、(それが摘発されるリスクがどの程度あるかはひとまず措いておいて)掲示板やブログに書き込まれたインサイダー情報を見て、取引をしたら即インサイダー取引かといえば・・・ネットを通じた情報取得という面では、「重要事実の伝達を受けた」という要件との関係がポイントです。


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Posted by 47th : | 00:20 | コメント (2) | トラックバック (2) | 関連エントリー (5) | Securities : Insider Trading

「聞いちゃったら」だめです

村上氏が残すもの」には、多くのコメントとTBを頂きありがとうございました。
で、頂いたTBを拝見させて頂いて補足した方がいいかなと思った点について、少しずつフォローアップをしようと思うんですが、まずは、念のため、この点から。

「聞いちゃったら」だめです

おそらく、弾さんの「聞いたもの負け」というキャッチフレーズが余りにも強烈だったんだと思いますが、21世紀生活研究所さん(「聞いちゃったインサイダー?」)のように「聞いちゃっただけでインサイダーというのは厳しすぎる」という具合にとられた方もいらっしゃったかも知れません。
 しかし、「こっちから聞いたんではない」とか、「儲けるつもりがなかった」とか、「そんな情報は使っていない」という類の言い訳はインサイダー規制では一切認められません。これは、現行法上、もっともクリアーな点の一つであって、その意味で村上氏が会見で「儲けるつもりがなかった」というのは通用しませんし、通用させる必要もないと私も思います(※)。

私が気になっているのは、仮に村上氏のリリースにあるような事実関係だとすれば(但し、この辺りは後述のように検察の主張は大分違うようですが)、聞いちゃったときの状況からすれば現実味の薄い話や、単なる願望レベルの抽象的な話であっても、インサイダー情報になるのか(※2)、という話です。
「聞いちゃったかどうか」が問題なんではなく、あくまで「聞いちゃった内容が何だったのか?」が問題ということです。 

なので、例えば、製薬会社の社員の友人と飲んでいて、「実はこの前発表した新薬の欠陥が分かって回収しなくちゃいけなくなりそうで、そのせいで首が飛びそうなんだよね。ローン組んだばっかしなのに、やってられないよ」と聞いてもいないのに一方的に愚痴られたとしても、その話を「聞いちゃった」以上は、その会社の株の売買はできません。持っているその会社の株は塩漬けです。
たとえ、「前から売るつもりだった」とか「結局、業績の上方修正と一緒の発表だったから株価は下がらなかった。むしろ上がって損したぐらいだ」と言うのは、何ら言い訳になりません。

なので、その意味で「聞いたもの負け」は、証券取引の基本的なルールであって、これ自体は言い訳は効かないので、その辺りは、どうか誤解しなで下さい。
極端なことを言えば、そういう気の置けない友達がいるとかで、インサイダー情報が望まないのに入ってしまうかもしれない会社の株は持たない方がいいと言ってもいいぐらいです。
(この辺りの、実務における心構えについては、ぐっちーさんが書かれているので、そちらも是非ご参照下さい。私も全面的に同意します(※3)・・・が、日本の場合、証券取引等監視委員会に相談してもノー・アクション・レターはもらえないので、結局、塩漬けにしたまま、インサイダー情報が公表されるまで待つか、どこかで委員会の感触を掴みながらリスクをとらざるを得ないというのがイタイところですが・・・)
その意味で、検察が「聞いちゃったこと」を問題視するのは、全然不思議なことではありません。 

問題は、それでも親から相続してしまったとか、職業がファンドマネージャーという因果な商売でポートフォリオを組むために仕方なく持ってしまっていて、友達にも微妙な話はやめてくれよ、と常々言っているのに、数か月前に新薬開発の功績で昇進したと喜んでいた友人が「うーん、もしかしたらだけど、おれ飛ばされるかも知れないんだよね」とため息をついているのを聞いてしまって、「あ、何かあるらしい」と思ってしまったとか、夢はビル・ゲイツ越えという新興IT会社の社長が「おれの夢はトヨタのオーナーになることなんだよね」と聞いたら、どうなんでしょうね、というところです。


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Posted by 47th : | 22:38 | コメント (4) | トラックバック (7) | 関連エントリー (6) | Securities : Insider Trading

村上氏が残すもの

(追記あり) 

今頃、日本では凄い騒ぎなんだろうなと思いつつ、村上氏が日本時間午前11時からの記者会見で「インサイダー取引」を認めたという報道をネットで見ているところです。

M&AコンサルティングのHPには、早速村上氏個人名義で「ニッポン放送株式の売買について」と題するリリースが掲載されています(このPDFのファイル名も泣けます)。

これによると、村上氏の「認めた」事実経緯は次のようなものであったようです。

・・・2004 年11月と2005 年1月にライブドアの堀江社長(当時)をはじめ とする方々が弊社を来訪された際、同社がニッポン放送株式を5%以上取得したいとい う意向をお持ちであると伺いました。
・ただ、当時のライブドア社の財務状況に鑑みれば、ニッポン放送株式を5%以上買い集めることは不可能だと考えており、当該意向は、ライブドアの単なる願望だとしか受け止めておりませんでした。・・・
・しかしながら、上記のライブドアによる株式取得の意向は、証券取引法167 条、同法施行令31 条に規定するインサイダー情報としての5%以上の株式買い集め行為について の決定であると解釈されるものであり、このような情報を知った以上は、MAC アセッ トマネジメント社の実質的なオーナーであり、非常勤取締役である私は、同社によるニ ッポン放送株式の買付けを停止させる義務がありました。
・十分な注意を払わずに上述の義務を怠ってしまったことは、職業として株式投資に関わ る者としては失格であり、ファンド出資者の方々にご心配をお掛けするとともに、皆様 をお騒がせしたことにつきまして、ここに深くお詫び申し上げます。

村上氏が、何故この段階で認めたのかという点については、いろいろな憶測が可能でしょうが、事実については認めて勾留の長期化を避け、情状を確保しつつ、公判では弁護士を前面に立てて「村上氏立件へのハードルとその影響」であげた167条の構成要件解釈に関する点をつき無罪を争うというのが一つの見方でしょうか。

・・・ただ、もし村上氏が、それすらも争わず、およそ上に掲げたような事実関係の下でもインサイダー取引に該当するという先例(※)のみを残して、日本を去ったとしたら・・・この「先例」は166条インサイダーも含めて、日本の証券取引実務に落とす影が村上氏が愛想を尽かした日本市場に残す呪いなのかも知れません。

あるいは、村上氏が「改心」して、およそ上に掲げたような基準の下で、村上氏が心当たりのある犯罪に当たり得る行為を全て検察に情報提供したとしたら・・・

レッドソックスはバンビーノの呪いに86年間苦しめられましたが、さて、村上氏の呪いはどうなるか・・・と、いったら考えすぎなんでしょうか。


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Posted by 47th : | 00:05 | コメント (15) | トラックバック (25) | 関連エントリー (7) | Securities : Insider Trading

村上氏立件へのハードルとその影響

きっと日本ではテレビや紙媒体も凄いことになっているんじゃないかと思いますが、海の向こうではネットぐらいしか情報源がありません。
それを見ていると、週明けにも立件ということで、基本的なストーリーは12月中に村上氏とLD側が接触した際にLD側の買付情報を村上氏が知って大量保有報告書で明らかになっている買増しを実施したということのようです。
これが基本ストーリーだとして検察の立件に立ちはだかる3つの法的なハードルと、もしそのハードルがクリアされてしまった場合に何が起こるかということを簡単にまとめてみましょう。

いつ「買付」は決定されたのか?

一つ前の記事でも書きましたが、日本のインサイダー規制においては、いつ「決定」がなされたかということが、大きなメルクマールになります。
これは法的な機関決定のタイミングではなく、その会社での意思決定の実態を踏まえて考えるべきとされています。過去の裁判例の傾向を見ると、LDの場合は社長である堀江氏が「決定」をすれば、取締役会での正式決議よりも前であっても「決定」はあったとみなされる可能性は高いでしょう。
問題は、堀江氏の中で、どの段階まで至れば「決定」と言えるかという点です。

例えば、12月に村上氏から提案された際に、ニッポン放送株式の取得も「将来的には」考えていたが、「具体的な」計画になったのは、フジテレビのTOBが開始された後で、ここから資金調達の手法なども具体的に検討し始めて、2月8日に間に合わせた・・・こういう事実関係の中で12月の堀江氏の心境をもって「買付」が「決定」されていたということはできるんでしょうか?

あるいは、12月の段階で堀江氏が社内でニッポン放送株式取得の是非についての検討を指示していたが、まだ検討中の段階であった場合は?

今回の場合は、その核心にいる堀江氏から証言をとることができるかが非常に微妙であり、その意味で堀江氏の内心に頼って事実を構築することにはリスクがあります。

そうすると、法解釈の問題として、「決定」のタイミングを早めることはできないか?、と、考えるのかも知れませんが、仮に上のように「抽象的な計画段階」や「検討段階」でも「決定」があったということになれば、単にファンドが苦しむというのではなく、上場会社の事業活動にも影響が出てきます。
例えば、自己株取得プログラムを決定するに際して、社内に他社との統合の「検討プロジェクト」があったら、当該プログラムによる自己株式取得にインサイダー規制の問題が生じてきますし、それ以上に、一応、東証の開示ルールではインサイダー情報が発生した場合には適時開示が求められていることからすると、そうした段階での適時開示が求められるというような話にもなってきます。

そういう意味で、検察が「決定」時期について、どのような法的解釈をとってくるのかは、ファンドだけでなく上場会社一般の実務にも影響を及ぼす可能性があるわけです。


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Posted by 47th : | 13:24 | コメント (8) | トラックバック (4) | 関連エントリー (7) | Securities : Insider Trading

ファンドの活動とインサイダー規制

今にして思えばタイムリーな話なんですが、昨日、とある金融関係の人と飲んでいて、次のような質問を受けました。

ファンドが投資先企業にこまめにインタビューをして得た情報で株の売買をやることはインサイダー取引にあたるのか?

日本のインサイダーには、色々と難しいというか答えにくい質問がたくさんあるんですが、これはそうした質問の中でも最も難しい質問の一つです。
で、昨日の段階では、「ケース・バイ・ケースなんで・・・」ということで答えておいたんですが、今後村上氏の案件がどうなるかは別として、もっと広い文脈でファンドとインサイダー規制との関係は注目を浴びてしまうでしょうから、ちょっと一度整理しておいた方がいいかも知れません。

日本のインサイダー規制の基本的な構成

まず、日本のインサイダー規制の基となる条文は証券取引法166条ですので、この条文のエッセンスだけを切り出して確認しておきましょう(ちなみに、これは会社関係者インサイダーの話で、これとは別に買付関係者インサイダー規制があることについては、一つ前のエントリーを参照ということで)。

・・・「会社関係者」・・・であつて、・・・重要事実・・・を・・・知つたものは、・・・重要事実の公表がされた後でなければ、・・・「売買等」・・・をしてはならない。

原文は、ごちゃごちゃしていますが、こういうことであって、「会社関係者」が「未公表」の「重要事実」を(一定のルートで)知りながら、株式を売り買いしてはいけません、というのが基本的なルールです。

従って、あとは、ファンドが会社の関係者にインタビューをして知った事実を基に売買をすることについては、この各要件に照らして考えていけば、答えが出るはずなんですが・・・
 


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Posted by 47th : | 01:06 | コメント (7) | トラックバック (1) | 関連エントリー (7) | Securities : Insider Trading

村上氏に買付関係者インサイダーの疑い?

(早速+6/2追記あり) 

インサイダー取引:村上氏を捜査 東京地検特捜部(毎日新聞)

「村上ファンド」を率いる村上世彰代表(46)に証券取引法違反の疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査を進めていることが分かった。05年のライブド アによるニッポン放送株買い占めが公開買い付け(TOB)に準じる行為に当たり、村上代表は買い付け情報を事前に知りながら同社株を売買したとされ、 TOBに関して禁じられたインサイダー取引の疑いがあるという。特捜部は証券取引等監視委員会とも連携し、既に関係者から聴取した模様だ。・・・
関係者によると、この時にライブドアが時間外取引で5%以上のニッポン放送株を買い集めた行為は、証取法上の「TOBに準じる行為」に当たるという。村上 代表は、ライブドアによる株取得情報を公表前に得てニッポン放送株を売買したとされ、特捜部はこうした行為が証取法の「公開買い付け者等関係者等が禁止さ れる行為」としてのインサイダー取引に当たる可能性があるとみている模様だ。

・・・というわけで、この「関係者」というのが誰かよく分かりませんが、この記事が正しいとすると、問題となっているのはライブドアによるニッポン放送株買付に際しての話のようです。
これがどう発展していくのかは、今の時点では予断を控えますが、とりあえず当時旧ブログの方で、今回問題となっているインサイダー取引と通常のインサイダー取引の違いをまとめているので、そちらをご紹介です。

この記事で書いているように、今回問題となっているのは、通常のインサイダー取引ではなく、買付関係者インサイダー取引です。この買付関係者インサイダーの一つの特徴が、問題となる取引は「売買」のうちの、「買い」だけで「売り」は問題とならない点。

というわけで、当時、村上氏はニッポン放送株の処分はやっていましたが、「買増し」はどうだったんだろう?ということで、この買付の前後のニッポン放送株に関するMACアセットマネッジメント(以下「MAC」と略します)の大量保有報告書を確認してみると・・・

  • 1/13 変更報告書(27条の25第1項)
    この報告書では、最後の売買は1月5日803,050株の取得で、この時点で18.57%保有ということになっています。
    こちらは、普通の大量保有報告書なので直近60日間の売買が報告されています。
  • 3/15 変更報告書(27条の26第2項)
    この報告書では、保有株式割合が18.57%から3.44%に落ちたので、証取法27条の26に定める「特例対象株券等」に落ちたということで、直近60日間の売買は報告されていません。 (この辺りについては、isolgue「敵艦スクリュー音、未だ無し!(ニッポン放送株:解決編)」をご覧下さい)

さて、そうすると、MACが証取法の規定を遵守していると仮定した場合、少なくとも、MACの持株割合が10%に下がる前に1%以上買いますことはできない(というか、していない)・・・と、もう少し歯切れよくいうと、(当事者たちはあくまで市場で誰が買ったか分からないと仰っていますが)ライブドアのToSTNET取引の相手方がMACであり、この2/8の時点でMACが8.57%以上の株式をライブドアに売ったのだとすれば、MACは2/8より前に1%以上のニッポン放送株式を買っていないということになります。

とすると、最初に戻って、買付関係者インサイダーが成立するためには、①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していて、かつ、②ライブドアの関係者が村上氏にその事実を伝達し、③その事実を知りながらニッポン放送株式を買いましたということが立証されなくてはいけません。
仮に村上氏が1/5の後、2/8までの間に買増しを行っていないとすれば1/5以前の取得の際に、少なくとも①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していなくてはならないわけです
まあ、この間に1%未満の買付行為があって、そこを問題視しているという可能性もあるんですが・・・もしそうだとすると、ライブドアは村上氏を信頼して相談を持ちかけたのに、村上氏は、それを使って一儲けした・・・でも、1%以上は買わなかったという話になるわけですが・・・なんか、「せこい」んですよね。出し抜くなら、5%ぐらい噛まして、鮮やかに出し抜けばいいし、1%に満たないステークスのために、相手との信頼関係を損ないかねないようなことをするというのも何かしっくりこないものがあります。

何れにせよ、今回のシチュエーションでは、仮に上記①~③が立証されたとしても、④村上氏による買増し行為が、ライブドアの意を受けて後にライブドアに株式を売却することを合意した上での行為であったとすれば、村上氏とライブドアは「共同買付者」であって、買付関係者インサイダーには引っかからないという解釈の余地も残っているところです(ただ、ここは文言解釈上微妙というのは、旧エントリーをご覧下さい)。
もっとも、当時は、当事者は、確か、お互い市場で売却したのであって誰に売ったかは分からなかったと言っていたはずなので、こういう話になると、当時のライブドアによる株式取得の経緯の際の適法性が怪しくなってくるわけですが・・・

何れにせよ、これまた法的には色々と論点があるということで、今後の推移は冷静に見ていきましょうということで。取り急ぎ。

(追記)

買付関係者インサイダー(167条)という趣旨の報道は、今のところ毎日だけのようですし、磯崎さんも 

「166条じゃなくて167条じゃないか」てなことをおっしゃる方もいらっしゃるようですが、どうなんでしょうか。

と仰っているので、上の話は、あくまで毎日新聞の記事が正しかったらという前提ですので、そこのところはご注意を。

(6/2追記)

その後の新聞報道を見ていると、1月5日以前に、①ライブドアによる買付情報を知っていた、という方向性と、②フジテレビのTOB開始の情報を知っていたという観測が見られるようです。

①ということになると、2月8日の1か月以上前の時点でライブドアが株式取得の「決定」がなされていたことになりますが、その間にフジテレビTOBという大きな状況変化が起きているわけで、これがなかったら取引ボリュームにかかわらず株価がTOB価格に張り付くという特殊な状況は起きなかったわけですから、その意味でも買付「決定」が12月にあったと言えるかは少し微妙。

②ということになると、TOB自体の準備は当然1か月前からやっているでしょうから、「事実」としては存在している可能性は高いわけですが・・・TOB情報を知って株を買い集めることは、市場買付と比べると摘発されるリスクは遙かに高いことを考えると、逆に、村上氏ほどの百戦錬磨の強者が何の法的なロジックもなく、そんな危ないことをやるのか、というところが腑に落ちないところです。


Posted by 47th : | 19:18 | コメント (4) | トラックバック (2) | 関連エントリー (6) | Securities : Insider Trading

 
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