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夢真、どうなるんでしょうね?

日本技術開発に対する夢真の買収提案については、新聞でも色々と採り上げられていますし、最近のマスコミの学習効果は凄まじく、問題の所在そのものは割と的確に把握されているようで、フジテレビが最初に事前警告型を入れた4か月前とは隔世の感があります(事前警告型のメカニズムについては、前に書いた記事もご参照ください)。

金融庁の対応は?

マスコミでも報道されているように、ポイントの一つは株式分割が発動された場合に一度かけたTOBを撤回したり、価格の引き下げが認められるかということになるわけです。この点について、夢真は金曜日に金融庁に上申書を提出しました。事前に根回しをしているのであればともかく、そうでなければ数日で照会結果が出るということは通常考えられないのですが、新聞報道によれば、夢真は週明けには公開買付け届出書を提出するということですから、まず、金融庁(直接の窓口は関東財務局ですが)としては、そこでどのような対応をとるかを考えなくてはいけません。
日経新聞にフローチャートが載っていましたが、金融庁としては、①届出書を不受理、②届出書をいったん受理した上で訂正命令、③届出書を受理した上で何ら対応をしないという3つの選択肢があるわけです。これまでの金融庁のスタンスからすると、買付価格の引き下げや買付条件の付与を積極的に肯定するということは難しいと思うのですが、他方で、解釈論として争いが残るところについて、「事前に」金融庁が独自の判断で止めてしまうということにも抵抗がありそうなところです。


公開買付公告の内容は?

ところで、今回は公開買付届出書が不受理となる場合も十分に考えられる中で、公開買付公告をどのようにドラフトするかというのも興味深いところです。
大きくいえば、公開買付公告による売付けの申込みの勧誘の効力発生を公開買付届出書の受理にかからしめるか、それとも、金融庁側の対応如何にかかわらず公開買付公告による勧誘は有効な状態にしておくのかが興味深いところです。また、いったん届出書が受理されたとしても、訂正命令が出されることもあり得るわけですから、その場合の処理をどうするのかといった辺りで公開買付公告の内容を注意深く見る必要がありそうです。

公開買付代理人は?

ところで、実際の公開買付を実行するためには申込みにかかる事務的手続きや決済の関係で公開買付代理人として証券会社が絡む必要があります。
ただ、仮に、これが「違法な」公開買付ということになった場合には、その公開買付代理人を務めるということは、証券取引法違反行為のリスクを抱えることになります。
また、はっきりクロということでなくても、金融庁が問題視する取引に関与することは、金融庁の監督を受ける立場の証券会社としては、結構リスキーなんじゃないかという気がします。
というわけで、この辺りで、今回の場合、どこが公開買付代理人となっているのかも注目したいところです。(夢真の代理人はライブドアを代理した三井先生の事務所ですから、ひょっとしたらライブドア証券なんていうこともあるんですかね?)

ところで・・・

ところで、確かライブドアの時にも似たようなことを考えたような気がするのですが、M&Aの実務をやっている人間からすると、今回の夢真の戦略というのは、実はいろいろな意味で疑問符がつくんですよね。
例えば、通常、ある会社の経営権を取得するのであれば、まずは対象会社経営陣と交渉して、実際の日本技開の事業や財務の状況を把握するためのデュー・ディリジェンスを行いたいと考えるわけです。実は、「敵対的なTOBをかけます」というのは、防衛側にとってライツ・プランを発動させますというのと同じで買収側にとっては「交渉のカード」としての意味合いを持っています。
買収というのは、最初は乗り気ではない対象会社経営陣に対して買収側は「敵対的なTOBを強行します」とか「委任状勧誘をやりますよ」とかいうプレッシャーをかけ、防衛側は「無理矢理TOBをかければ防衛策を発動させますよ」というカードを見せながら着地点を探るという話です。もちろん、米国では、最初にTOBをかけて「脅し」の信憑性を増すという戦略もあるのですが、それが可能なのはTOBの最長期間が一律に定められているわけではなく、条件付けや価格その他の条件変更も比較的柔軟な制度が背景にあるので、日本とはちょっと違います。
ということからすると、純粋に経営権の取得だけが目的なら、今回の夢真のとった戦略というのは、ちょっと性急という感じもあります。また、条件付TOBについても、実質的に同様の効果をあげつつ、もうちょっとリスクの少ない方法というのもありそうなので、その意味でも、あえて正面突破を図ろうとしているのも面白いところです。
そういう意味でいうと、夢真と代理人弁護士の方々は、かなり「確信犯」的に買収防衛策に風穴をあけようとしているのかも知れません。
そうだとすると・・・途中で中途半端な和解では終わらずに、最後まで行くかも知れませんね。外野的には少し楽しみです。

Posted by 47th : | 11:54 AM

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夢真対日本技術開発株の決定が東京地裁のホームページに掲載されました。 これも、鹿子木裁判長。 全文は、こちら(東京地裁) いずれもう少し詳しく書く... [続きを読む]

トラックバック時刻: August 2, 2005 09:01 AM

コメント

>最近のマスコミの学習効果は凄まじく、問題の所在そのものは割と的確に把握されているようで

皆さん、「敵対的M&A対応の最先端」を読んでお勉強されたのでは?
因みに公開買付代理人はKOBE証券のようですね。

Posted by 悪童 : July 19, 2005 03:51 AM

KOBEですか。。。

Posted by HardWave : July 19, 2005 10:07 AM

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