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東証規則改正案の公表

「黄金株」原則禁止?でとりあげた東証の規則改正の要綱試案が公表されましたね。

買収防衛策の導入に係る上場制度の整備等について(要綱試案)

うわさ通り、黄金株(拒否権付株式)の原則禁止が盛り込まれています。

「上場株式が備えるべき基本的かつ重要な権利が著しく損なわれる状態」と しては、デッドハンド型※のライツプランの導入及び拒否権付株式(商法222 条9項)の発行(政策的理由により国が保有するような場合を除く)を考えて いますが、これに追加すべきものの有無等について引き続き検討します。

前にも書いたように「拒否権付株式」というのでは、現在用いられているタイプの優先株式でも、これに当たる可能性があるので、少なくともここでいう「拒否権付株式」がどこまでを指すのかは、もっと詳細な検討が必要なはずのところです。
特に、新会社法では、「ある種類の株式の全部取得制度」が導入されているので、株主総会の特別決議を押さえることができれば、何れにせよ拒否権付株式は消滅させることが可能(なはず)なので、防衛策としての拒否権付株式の有用性は相当に限られています。なので、(11/23修正 葉玉氏のコメントをご参照下さい)拒否権付株式についても、全部取得決議に拒否権を有するようなデッドハンド型でない限りは、その弊害というのは非常に限定されているので、ライツ・プランと比べて、そこまで「毛嫌い」する必要はないと思うんですが・・・むしろ、拒否権だけの問題であれば、委任状勧誘を先行させなくてもTOBで2/3超取得できれば、あとは時間の問題とういところもあるんですけどね。
「追加すべきものの有無」は検討するということですが、このリストアップをより制限的でない方向に解釈する方向での検討も是非進めていただきたいところです。
あと気になったのは、東証がサンクションを課す方向で検討しているものとして、あげられている中の次のパターン。

  • 新株予約権を利用したライツプランのうち、新株予約権の割当対象株主の確定後に当 該新株予約権の発行が中止される可能性があるもの(アメリカでもとられているDistribution Date確定後のwindow periodが禁じられる?この発想でいくとDistribution DateとFlip-inをずらすのも禁じられる??)
  • 取締役の解任に係る株主総会につき、総議決権の過半数を超える数の議決権を有する株主の出席を要することとし、又は出席した株主の議決権の3分の2を超える賛成を要することとする定款の変更(会社法施行後)(何れにせよ直後の定時株主総会では決戦がなされる日本で、あえて臨時総会での解任の可能性を「強制」する必要はある?買収者に単にレバレッジを与えるだけ?)
  • 取締役の解任決議の要件を加重している会社によるライツプランの導入(会社法施行後)(これも同じ。そこまで神経質になるべきもの?)

・・・どうも何というか、投資家保護というのは、経営陣の地位保全を防止することとイコールだと思っている節があるんですが・・・ある程度の地位の安定性があるからこそ、経営ができるところもありますし、日本の場合は、アメリカのような期差任期制はとれないので、定時株主総会がキリになるというのは、それなりにいいバランスだと思うんですが、それを買収者側にシフトすることが、投資家を本当にベターオフするのか・・・何だか、少し「過剰防衛」気味という印象もありますが、どうでしょう?


Posted by 47th : | 09:29 AM

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コメント

いつもこのブログを楽しく拝見しております。

ちょっと気になったのですが,拒否権付株式に,全部取得条項を付すための定款変更をする際に当該拒否権付株式の株主の種類株主総会の決議が必要なので,買収者がいわゆる普通株を3分の2取得したとしても,拒否権付株式を会社が取得することはできないのではないでしょうか(私の勘違いならば,すいません)。

先生,こんど私のブログにも遊びに来てくださいね。
(それから,磯崎さんのブログで話題になった停止条件付授権枠拡大決議については,磯崎さんのブログにレスをつけておきましたので,よろしければご覧ください。)

Posted by 葉玉匡美 : November 23, 2005 10:33 AM

>葉玉さん
ご指摘ありがとうございます。
立法された方の勘違いなんて・・・多分、私の方の勘違いだと思います。条文化の前の段階で、この制度の狙いは普通株主総会の(特別)多数決で種類株主を(勿論フェアバリューでですが)キャッシュアウトできる制度になるというようなことを仄聞して、「なんてラディカルな」と思った印象が刷り込まれてしまっていました。今手許に条文がないので、家に帰ったら見直してみます。ありがとうございました。
ブログの方は、密かに?拝見させていただいています。細かい論点もさることながら、ところどころの「大人の事情」がツボにはまっています。
磯崎さんの方のコメントも、遅まきながら拝見しました。条件の確度の問題というご指摘は、その通りかと思います。ただ、確度の問題は条文上の要件というわけではなく、また、性質上相対的なものなので、条件の内容が具体的に開示された上で株主の特別多数が承認をした場合になお決議取消なり無効なりになるのかな?というところは、それなりにargueできるのかなという気もします。
今後とも、何かおかしなことを言っていたら、ご指摘頂ければ幸いです。

Posted by 47th : November 23, 2005 12:58 PM

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